震災と原発事故で神奈川に転入してきた中高生をサポート/ SDCハート(茅ヶ崎市)副代表・事務局長 金井加代子さん

by 宮島 真希子 | 2013年2月1日 11:51 AM

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「神奈川と被災地をつなぐ双方向の事業をしていきたい」と語る金井さん=茅ヶ崎市東海岸北のSDCハート事務所で

「神奈川と被災地をつなぐ双方向の事業をしていきたい」と語る金井さん=茅ヶ崎市東海岸北のSDCハート事務所で

東日本大震災発生からもうすぐ2年。被災地から緊急避難し、不安を抱えながら神奈川県内の学校に転入学して母子だけで生活する世帯も多い。震災発生直後から子どもたちと保護者をサポートし、神奈川の子どもが防災やまちづくりを学ぶ活動も並行する任意団体・SDCハート(茅ヶ崎市東海岸北)。2012年8月には、神奈川県内の高校生・大学生が宮城県気仙沼市を訪れるスタディツアーを企画・実施した。「震災を風化させてはいけないし、神奈川にいる私たちは学ばなければいけない。次世代を育てることも私たちの大事な役割だと思っています」。キャリアコンサルタントという“本業”を生かし、未来を見据えて活動を続けている。

被災地と神奈川をつなぐ

震災前から神奈川県立高校のキャリアアドバイザーを務めていた金井さん。SDCハートは、福島県双葉町出身で神奈川県立高校の補助教員だった知人男性とともに、震災直後の2011年4月発足させた。「彼は神奈川の大学を卒業後は、地元で就職する予定でした。しかし震災で家も仕事も失ってしまった。急きょ、補助教員の仕事を紹介したのです」

福島から緊急避難し、その男性が勤務する高校へ転入した生徒がいた。なかなか新しい学校になじめず元気がなかったという。「同郷のあなただからこそできるケアがあるんじゃない? とアドバイスしました」。県立高校の教員有志の協力もあり、被災地から転入してきた中高生が交流し元気になれる団体を設立した。

笑顔、夢、そして挑戦

SDCはSmile(スマイル)、Dream(ドリーム)、Challenge(チャレンジ)の頭文字からとった。まずは笑顔を取り戻し、夢をあきらめず前向きに歩き出す-。仲間づくりや学習支援、復興支援イベントなどを企画。保護者会を定期的に開くなど、子どもたちと一緒に生活する保護者への支援にも力を入れる。そのほとんどが母親だ。

現在、会員は50世帯ほど。その多くが福島県から避難してきた母子で、将来への不安を抱える。「お母さん同士で共感し、支えあう『県人会』のような形を目指して応援しています。いずれは、SDCハートの運営をお母さん方にバトンタッチしたい」

福島県の高校生は、神奈川よりも製造業に就職を希望する割合が高い。このため、福島の高校生が、神奈川内にある製造業の現場で就業体験をするインターンシップも行った。子どもと母親の支援に加え、被災地と神奈川をつなぐ双方向の事業をこれからも展開したいという。

現地を訪ね、「温度差」を自覚

2012年8月に宮城県気仙沼市を訪れたスタディツアー(SDCハート提供)

2012年8月に宮城県気仙沼市を訪れたスタディツアー(SDCハート提供)

2012年8月、神奈川県内の高校生と大学生36人が参加して3泊4日の被災地スタディツアーを行った。復興支援で気仙沼市に事務所を置く公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA、本部=東京都新宿区)に協力を依頼し、避難所だったコミュニティセンターに宿泊。実際に街を歩いたり、震災を体験した人に体験談を語ってもらったりした。

「現地では『復興という気持ちにまだなれない』という方が多かった。自分のことで精一杯だと。そこをあえてお願いしました」。学生たちは、実際に現地を訪ねたことで、初めて被災地と神奈川の「温度差」も感じたという。

もう1年半、まだ1年半…。「観光客気分で来てほしくない」という思いを受け止めながら、次代を担う子どもたちに社会貢献や奉仕の心に気づいてもらいたいと、金井さんは地元との信頼関係を築くため、連絡調整に奔走した。

私たちは微力、でも無力じゃない

会員向けに発行する「SDCハート通信」(SDCハート ホームページより)

会員向けに発行する「SDCハート通信」(SDCハート ホームページより)

スタディツアーを終えて神奈川に帰ってきた高校生と大学生。同月下旬には横浜市内で報告会を開いた。ベビーカーや、封を開けていないジュースが散乱するがれきを実際に見て、その生々しさ、生活感にがくぜんとした。軽々しく「がれき」「復興」と口にしてはいけないと感じたという。

現地を訪れたからこそ学んだものは多かった。「自分が住むまちを防災の視点で見ることができるようになった」「私たちは微力だけど無力じゃない。だから頑張ろうと思った」。子どもたちは多くを学び、自分の言葉で語った。

SDCハートでは現在、会員が集う交流会を開催したり、被災者対象の無料カウンセリングを紹介するなど精力的に活動を続けている。他にも、震災発生から丸2年の今年3月11日、実際に東北の地を訪ねるスタディツアーを実施するのはどうか?など、アイデアは尽きない。

「神奈川に災害が起こったとき、1人のいのちも失いたくない。子どもたちに自分のまちをつくる、守っていくという意識を持ってほしい」。これからも被災した子どもたちと親を支えながら、神奈川の子どもたちの育成にも力を注いでいく。

▽SDCハート

http://www.sdc-heart.com/

Source URL: http://kanamag.net/archives/55714