日々の暮らしで培った、きめ細やかな目線を防災・減災に生かす  女性防災クラブ平塚パワーズ(平塚市)


平塚パワーズのメンバー。前列右から2人目が会長・菅野由美子さん=平塚市旭北公民館で

平塚パワーズのメンバー。前列右から2人目が会長・菅野由美子さん=平塚市旭北公民館で

平塚市に、全国でも珍しい女性だけの防災ボランティア組織がある。発足から17年。段ボールを利用した簡易トイレや、バスタオルに下着や靴下を縫い付けた防災ずきんなど、お金をかけず身近にある物を使った災害グッズを考案したり、学校や自治会に出向いて防災を呼びかけたりと、地域に密着した活動を継続。今や、平塚になくてはならない防災リーダーだ。「災害時、まず自分の命を守り、次に家族、そして地域を守る」。当初からのテーマを基本に、生活に密着した視点を生かした防災・減災技術に日々、磨きをかけている。

阪神・淡路大震災を機に

1995年1月発生した阪神・淡路大震災。平塚市は同年度から、災害に強いまちづくりを進めようと、主婦を対象とした「女性防災リーダー育成研修」(2005年度からは「女性防災コミュニティ講座」に名称変更)を開講した。

研修は、防災に関する知識を深める座学と、消火器の使い方や応急手当について学ぶ実践講座で構成されたカリキュラムを約1年間かけて学ぶものだった。第1期の修了生30人の女性たちが「もっと防災の知識や技術を深め、地域の役に立ちたい」と設立した団体が「平塚パワーズ」だ。

「当初は、講座修了生の中で活動を続けたい人が任意で入会していました。今は講座を受けていなくても、意欲がある方なら大歓迎です」と第5代会長の菅野由美子(すがの・ゆみこ)さん(61)。菅野さんは、藤沢市出身で結婚を機に平塚へ移住。市の広報紙を見て「地域にかかわることがしたい」と、1997年度の研修を受けたことが入会につながった。「日頃の備蓄品や災害時に役立つ知識を定例会の中で勉強できるし、知り合いも増えて一石二鳥」と会員は皆、楽しみながら活動している。

地域で活躍

保育園での防災講習会の様子。年齢に合わせて、防災に興味を持ってもらえるよう工夫を凝らす=平塚市河内・あさひ保育園で

保育園での防災講習会の様子。年齢に合わせて、防災に興味を持ってもらえるよう工夫を凝らす=平塚市河内・あさひ保育園で

現在、会員は30代から70代までの50人。市内を6ブロックに分け、会員は普段、自分の居住ブロックを中心に活動する。自治会の防災訓練やPTAや各種団体の防災講習会、幼稚園・保育園・小中学校への訪問…。1年を通して市内各所から依頼が舞い込む。依頼が来ると、活動の内容や必要な人数を事前に打ち合わせるなどして調整する。

子どもを対象にした講習では、紙芝居やクイズなど、楽しみながら防災に関心を持ってもらえるように、年齢に合わせて工夫を凝らす。「○」「×」と裏表に大きく描いたうちわなど、使用する小道具のほとんどは会員の手作りだ。保護者向けに、応急手当などの講習も実施する。

市の防災フェスティバルなど大きなイベントには、オリジナルの「防災ぬりえ」を持参。子どもや女性にも日常から防災を意識してもらうのが狙いという。「メンバーも、事前に必ず練習して本番に臨みます。子どもや地域の皆さんの反応を見ながら教えるのは楽しいですよ」。「また来てね」と笑顔で送られたり、スーパーなどで「パワーズさんだ!」と声をかけられたりすると、地域に生かされ、活動が浸透していることを実感するという。

独自の段ボールトイレを考案

会員が独自に試作、改良を重ねた段ボールトイレ

会員が独自に試作、改良を重ねた段ボールトイレ

日々の暮らしの中で培われたきめ細やかな視点を生かし、災害時に必要な備品の開発を手掛けているのも、平塚パワーズの特徴だ。

例えば、段ボールを使った簡易トイレ。大人が座っても安定するよう強度をもたせ、かぶせたビニール袋の中に用を足す仕組みだ。阪神・淡路大震災の際、多くの女性が避難所でのトイレで苦労したという話を聞き、会員がアイデアを持ち寄って試作を重ね、約1年かけてかたちにした。

中に紙おむつやペット用の砂を入れることで、臭いを抑えられるようになっている。2011年3月6日、仙台での講演会場で実物を披露したところ、人だかりができた。

数百枚を準備した「簡易トイレの作り方」紹介チラシも好評で、たちまちさばけた。その直後の東日本大震災発生。3月16日、仙台市消防局の担当者と連絡が取れ、再度段ボールトイレの作り方の資料を送ったという。

「救援物資の入った段ボールが避難所に山積みにされている様子を、テレビで見ました。女性や高齢者の方々がトイレで困っているのを何とかして助けたい、その一心でした」。被災地の現場で役立った段ボールトイレはその後も評判が広がり、平塚市内だけでなく東京や千葉でも研修の依頼があるという。

楽しみながら、「備え」を実践

月1回のブロック定例会や役員会など、会員が集まる機会は自然と「勉強の場」になる。バンダナやネクタイなど、身近なものを使ったけがの応急手当を学んだり、下着やタオル、靴下など避難時に必要な小物をバスタオルに縫い付けた防災ずきんを披露し合ったり、情報交換も欠かさない。

パワーズは会員による1人1000円の年会費だけで運営する。研修内容など企画を立てるのも、会員だけでできるようになった。

「パワーズの活動を通して、防災についていろいろ学ぶことが安心・自信につながります。メンバーは自宅で応急手当の練習をしたり、日頃持ち歩くと災害に役立つ品物などの話をしたりするので、家族も勉強になるようですよ。主婦目線になりがちですが、それがパワーズの良いところだと思っています」と、菅野さんはこれまで築いてきた仲間たちとのきずなと、そこから生まれてきた確かな歩みに手ごたえを感じている。

いつ起きるか分からない災害。日々培った地域のきずなで被害を少しでも減らせるよう、平塚パワーズはこれからも地域とともに活動していく。

【関連動画】イザ!という時の備えは出来ていますか? 女性だけの防災組織「女性防災クラブ 平塚パワーズ」(かなマグ.net 2012年8月28日)

http://kanamag.net/archives/45837

▽防災リーダー(平塚パワーズの紹介も。平塚市ホームページ内)

http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/bousai/bousaileader.htm

▽女性防災クラブ平塚パワーズ「平成24年度神奈川県県民功労者表彰」受賞を報告(記者発表資料 平塚市)

http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/press/pres20120101.htm

 

 

 

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【動画】イザ!という時の備えは出来ていますか? 女性だけの防災組織「女性防災クラブ 平塚パワーズ」


ダンボールとガムテープで手軽に作れる衛生的な簡易トイレを紹介します。

この段ボールトイレを広める取り組みをしているのが、平塚市で活躍する「女性防災クラブ平塚パワーズ」。これ以外にも、保存食をおいしく食べる方法、牛乳パックで作る家具固定器など、市民目線のユニークな発想で行っています。

投稿者: さん
投稿日:2012/08/24
撮影場所:平塚市

【参考記事】
▽高まる防災意識市民のアイデアきらり (タウンニュース)
http://www.townnews.co.jp/0605/2011/03/31/100502.html
▽女性を守る女性たち!「平塚パワーズ」を取材して (日経ウーマン)
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/special/20110427/110804/

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