現地に行かなくてもできる復興支援ボランティアを広めたい 被災地の写真洗浄活動を続ける/海辺のあらいぐま(茅ヶ崎市) メンバー千葉晃嗣さん、丸田恵吾さん


海辺のあらいぐまメンバーの千葉晃嗣さん(右)、丸田恵吾さん(左)=茅ヶ崎市で

海辺のあらいぐまメンバーの千葉晃嗣さん(右)、丸田恵吾さん(左)=茅ヶ崎市で


湘南・茅ヶ崎市で、東日本大震災による津波によって壊れた家屋から流出し、持ち主が分からなくなり、汚れてしまった写真を洗浄するボランティア団体「海辺のあらいぐま」を運営している千葉晃嗣さんと丸田恵吾さん。本業はカメラマンでもある2人。2011年夏、東北地方でボランティアをしている際に、津波で流された拾得物の展示場を訪れた。そこで、持ち主の元に戻れず、腐食した写真を目にして衝撃を受けた。その後、東京で写真洗浄をしているボランティア団体があることを知り、参加。その後、その支部として茅ヶ崎で「海辺のあらいぐま」をスタートした。その活動と今後について千葉さんに聞いた。

一刻も早く持ち主に戻したい
東北復興支援のボランティアとして、2011年夏、東北地方にある拾得物の展示場で津波によって流された写真を目にした千葉さんは、笑顔で写っている結婚式のスタジオ写真や幸せな日常のスナップ写真が、まるで燃えてしまったかのように変色しているのを見て衝撃を受けた。

バクテリアが写真のゼラチン質を食い荒らし、写真の表面が溶けて黄色や赤の層が染み出ていた。津波で流されたアルバムは、自衛隊や消防団、地元住民が瓦礫を撤去している際に見つかることが多く、腐食が激しい。早く洗浄しないと劣化が進み、腐食し、最悪の場合は、像が消えて真っ白になってしまうという。「どの写真も『大切な思い出』だったのだろうな。『この写真に写っている人たち、今どうしてるんだろう?』という思い、また『写真の中の幸せ』と『消えそうになってしまっている写真』とのギャップに、ショックを感じました」。

最初のボランティアに参加後、被災地の写真を預かって洗浄している東京都武蔵野市のボランティア団体「あらいぐま作戦」の存在を知り、同活動に参加。今すぐ洗浄する必要がある写真が大量にあり、とても1ヵ所では追いつかないという状況だったが、さらに追い打ちをかけるように、作業場としていた木造アパートの取り壊しが決定していた。

このため「あらいぐま作戦」では新たな洗浄拠点を探していた。そこで千葉さんは、居住している茅ヶ崎のマンションで理事会に相談。幸い理解を得られ、共有スペースである娯楽室の使用できることになった。「あらいぐま作戦」に参加していた横浜・湘南地区のメンバー5人による「海辺のあらいぐま」は、こうしてスタートした。

千葉さんは「リーダーなんて向いていないし、パソコンも持っていない。洗浄経験も数えるほど…。そもそも茅ヶ崎のような小さな街で参加者が集まるのか?」と思いながらも、Twitterやブログ、ボランティア募集の掲示板に掲載する方法をメンバーに教えてもらいつつ、すべてを手探りで始めた。

ボランティアで洗浄ノウハウ共有
傷んだ写真の洗浄は、アルバムから写真を丁寧に剥がすことから始まる。その後、大まかに汚れを落としてからすべての写真をスキャンしてCD-ROMに収録。筆や指を使って水洗いしたり、細かい汚れは歯ブラシや化粧パフ、綿棒などを使って落としていく、女性の参加者からの提案で導入した化粧小物が役立っているという。

CD-ROMに収録した写真は筆や指を使って、丁寧に水洗いする。

CD-ROMに収録した写真は筆や指を使って、丁寧に水洗いする。

カビの繁殖を防ぐため、写真を完全に乾燥させてから、新しいポケットアルバムに収納し、最後にCD-ROMを添付。写真の持ち主に発見してもらいやすいように、表紙に集合写真を貼付けたり、キーワード「結婚式」、「○×小学校卒業式」、「海水浴」などを書き出すように工夫している。これらのアルバムは作業終了後、東北各地の展示場や、仮説住宅での出張展示会に送られる。その後、半分以上は持ち主が見つかっているとのこと。

洗浄後の写真が完全に乾燥するように室内で陰干しする。

洗浄後の写真が完全に乾燥するように室内で陰干しする。

「海辺のあらいぐま」では、募金等は行わず、参加者に交通費を負担してもらう代わりに、作業に必要な小物や消耗品は千葉さん、丸田さんが用意するという形で運営している。またマスクや紙製アルバム、印画紙などは、被災地の写真洗浄を支援している富士フイルムが支給している。

写真洗浄をボランティアの一歩に
活動を始めて1年が経った。週2回、毎回約20人参加している。インターネットを使った告知が効を奏し、現在では、実参加人数340名以上。洗浄枚数約2万枚(アルバム900冊)、そのすべてをデジタル化している。関東各県から参加があり、そのほとんどがボランティアに初めて参加するという人ばかり。また、海外在住の方から「一時帰国に合わせて参加したい」という問い合わせもあり、インターネットのありがたさも感じている。

これらのアルバムは作業終了後、東北各地へ送られる。

これらのアルバムは作業終了後、東北各地へ送られる。

震災後、ボランティアをしたいと思っていたものの「被災地での活動は体力などに不安があって踏み出せなかったが、写真洗浄ならできそう」という人が多いという。千葉さんは「被災地を支援したいという温かな気持ちに触れると私たちもうれしい。この活動を通じて、広い意味で隣の人のことを考えられる機会がもっと増えるといいなと思います。被災地でなくてもできるボランティアがあることを知ってもらいたい」と語る。

東北でのボランティアに参加している人も多く、昼食時に情報交換をすることもある。また参加者が「海辺のあらいぐま」以外のボランティア団体の活動を体験し、持ち帰ったパンフレットは作業場に貼るようにしている。地域の活動に関心を持ってもらい、他のボランティア活動を始めるきっかけを提供する場にもなっている。「湘南発の小さなボランティア」がやがて大きな輪になっていくように、千葉さんたちは活動を続けていく。

参加者が体験した他のボランティア団体のパンフレットも作業場に貼っている。

参加者が体験した他のボランティア団体のパンフレットも作業場に貼っている。

▽リンク
海辺のあらいぐま
http://beachguma.blog.fc2.com/

写真救済プロジェクト(富士フイルム)
http://fujifilm.jp/support/fukkoshien/

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