「ありがとう」のキャッチボールを!東北復興まつりの仕掛け人、「かながわ11」のメンバー下澤敏也さん


 10月末、横浜公園から県庁に続く日本大通り(横浜市中区日本大通)で「第2回東北復興まつり」が開催された。東日本大震災の被災地、岩手・宮城・福島・茨城の4県から60店舗、神奈川県内から50店舗の、計110の飲食店が参加。2日合わせて約20万人が足を運び、各地の味を楽しんだ。どの店舗からも威勢よく呼び込みの声が響き、多くの屋台に行列ができた。訪れた市民は、一軒一軒のブースを興味深くのぞき、東北ならではの食や特産物を楽しんだ。

第2回東北復興まつりが行われた日本大通り。多くの人が足を運んだ。

第2回東北復興まつりが行われた日本大通り。多くの人が足を運んだ。

 「第2回東北復興まつり」を主催したのは「かながわ11(イレブン)」。神奈川県内の飲食店経営者11名からなる組織だ。メンバーの1人、東北復興まつりの広報担当で、有限会社「たのし屋本舗」代表取締役の下澤敏也さん(45)=横須賀市追浜町=は「この東北復興まつりは、東北と神奈川の間で、『ありがとうのキャッチボール』をしたいという思いで企画しました」という。

 3月の震災直後、急激に冷え込んだ消費に影響され、深刻な打撃を受けた外食産業。その状況を改善しようと2011年4月5日、外食市場の活性化サービスを提供するフードリンク(中央区銀座)が「がんばれ外食!座談会キャラバン@横浜」を開催した。その参加メンバーが集まり「東北のために神奈川県の飲食店ができる活動を」という目的で発足したのが「かながわ11」だ。

 「かながわ11」はまず、4月17日・5月22日の2回に渡り宮城県名取市で「元気!屋台村」と題し、炊き出しを行った。同じ場所で2カ月連続で炊き出しをしたことで、地元の小さな飲食店や農家の人たちとつながりができた。
 その名取市の炊き出し現場で下澤さんら「かながわ11」のメンバーはたくさんの「ありがとう」の言葉をかけてもらったという。しかし同時に下澤さんの中に疑問が生まれた。「被災地の人たちは、いつまで『ありがとう』と言い続けなくてはならないのだろう」。仕事の現場に立てば、被災者は被災者でなくなる。生産物やサービスの「提供者」になり、お客さんから感謝される立場になれる。「被災地の人が『ありがとう』と言われる場をつくりたい」。東北復興まつりは、そんな思いから始まった。

 この東北復興まつりが他のチャリティーイベントと大きく異なるのは、地元に根付いた小規模の生産者たちが出店している点だという。「わたしたち飲食店の強みは、食事を楽しむ空間を、お客様に提供できることです。今まで支援者に『ありがとう』と言うばかりだった被災地の生産者も、販売の場をかながわで得ることで、『ありがとう』と言われる側になれる。そんな『ありがとう』のキャッチボールをできる場を作り続けて行きたいのです」と下澤さんは、声を強める。

 2回の炊き出しでつながりのできた被災地の生産者たちは、震災で販売場所や流通ルートを失っていた。「かながわ11」は生産者の支援を目的に、6月25・26日、第1回目の東北復興まつりを横浜公園(横浜市中区横浜公園)で開催した。
 通常の店舗営業をしながらの準備となったため多忙を極めたが、下澤さんらメンバーは「被災地の生産者の笑顔が見たい」という一心で被災各県に足を運び、招待する生産者を集めた。
 その努力が報われ、第1回目は約15万人が来場し、全ブースの商品が完売した。2日間で680万円の売り上げを東北へ持ち帰ってもらうことができたという。「将来の不安を口に出さず、あきらめず、声を張り上げて商品を販売する東北の生産者たちの熱意には、こちらが『ありがとう』という感謝の気持ちを持ちました。その温かい気持ちが、4か月という短いスパンでの第2回目開催につながったと思います」。

 10月末のまつりは、東北・神奈川共に出店ブースを増やし、東北の生産者・飲食店以外にも、地元神奈川の被災地支援団体や、高校生たちのパフォーマンスも行われた。「神奈川で販売すること、パフォーマンス会場で交流を持つことで、東北の復興の証を伝えるステージを提供したい」と下澤さんはいう。前回は水産業者が来ることができなかった。下澤さん自身のお店も水産物を扱っているため「非常に気になっていた、水産業者の方が来られるようになったのも本当にうれしかったです」と振り返る。

第2回東北復興まつりでの下澤さん。当日は会場の交通整備もつとめた。

第2回東北復興まつりでの下澤さん。当日は会場の交通整備もつとめた。

 今後は、第3回目の東北復興まつりの開催を目指すとともに、被災地の生産者が継続して商売をできる関係を作りたいという。「すでに、岩手の業者と取引を始めた店もありますし、『かながわ11』のメンバーが被災地に飛んで、飲食店の立ち上げをサポートしようという話も出ています。2回の炊き出し、2回の復興まつり開催を通して、もう親友のような信頼関係ができてきたと思います。」と下澤さん。
 「支援する・される、という立場ではなく、商売をする仲間として、同じ目線で、お互いのノウハウを生かし、一緒に汗を流す関係を続けていきたいです」。神奈川と東北の、食を通じた『ありがとう』のキャッチボールは、少しずつ形を変え、広がりながら続いていきそうだ。

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http://kanamag.net/archives/25241

▽リンク
『かながわ11』Web
http://www.kanagawa11.com/
三浦半島の地魚と地野菜|うれしたのし屋・魚一屋・○う商店
http://www.uretano.co.jp/index.html

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