「被災地の桜」から見えたことを伝えたい-東日本桜前線 伊藤洋佑(ひろすけ)さん



 6月28日~30日に、神奈川県民センター(横浜市神奈川区鶴屋町)で行われた、「第2回かながわ東日本大震災ボランティア活動基金チャリティーバザー」(主催、神奈川災害ボランティアネットワーク)。
 その一番奥のスペースで、15枚の桜の写真が展示されていた。
 「東日本桜前線」、と名付けられ、展示された桜の写真は、すべて東日本大震災の被災地で撮影されたものだ。
 河川敷に打ち上げられたマグロと一緒に写る桜の木や、真横に倒れながらも満開の花を咲かせている桜の木。

 そんな写真を撮影したのは、相模原市に住む伊藤洋佑(ひろすけ)さん(34)。この4月~5月の間、東日本の被災地の桜を撮影して回っていた。
 青年海外協力隊員として、コスタリカで生態調査のため、多くの自然、野生動物の撮影をしていたという伊藤さん。
 東日本大震災が起こり、同じ日本人として、自分に何ができるかと考えたとき、日本人がこよなく愛する桜を通して被災地の様子を人々に伝えようと思ったという。

福島県いわき市岩間町仁反田の桜(東日本桜前線・伊藤さん撮影)

福島県いわき市岩間町仁反田の桜(東日本桜前線・伊藤さん撮影)

 途上国でのボランティア経験も豊富にある伊藤さんが、いわゆる炊き出しや泥出しという「直接的な支援」ではなく、被災地の桜を撮影するにいたったのは、震災後の4月に広島で桜を見たことがきっかけだった。
 地震の被害状況が明らかになるにつれ、津波の被害とともに福島第1原子力発電所の事故のことも大きく伊藤さんの心を揺さぶった。
 そんなとき、過去に原子爆弾による大きな被害を受けた広島で見た、桜の木の生命力。
 今、自分だからこそできることは、被災地の桜を写すことで、人々に被災地の現状と生命力を伝えることだと直感した。

 

 移動は自家用車。伊藤さんの父は「ガソリンがないと思えば」と、自身は自転車通勤に切り替え、快く車を貸してくれた。
 伊藤さんの持ち歩いていた地図には、自身が移動したルートが赤で記してある。×印で「通行止め」と書いてある箇所も多くある。
 写真を見ている人たちに、伊藤さんが地図を指しながら、当時の状況を話すと、真剣に耳を傾け、食い入るように桜の写真を見入る人が多くいたのは印象的だ。

 実際に桜を撮影し始めて「桜と人間が重なって見えてきた」と、伊藤さんはいう。
 津波が来たことも知らないかのように真っすぐ立って満開に咲いている桜の木と、真横に近い形に折れ曲がっているにも関わらず同じように満開に咲いている桜の木。
 折れ曲がった桜は、大きく被災した人間の姿にも見える。満開に咲いた桜は、生命力の象徴のように思えたという。

宮城県気仙沼市大川の桜(東日本桜前線・伊藤さん撮影)

宮城県気仙沼市大川の桜(東日本桜前線・伊藤さん撮影)

 辛かったのは、撮影したくとも、あるべき場所に桜の木がない地域もあったこと。宮城県の名取市を訪れた際には、地域全てが流されてしまっていて、桜の木が一本も見当たらなかったという。
 そんな中で、伊藤さんが「東北人の強さ」を感じた言葉があった。「『東北は冬は寒いし、どこへ行くのも遠いし、もともと苦労している土地だ。そして被災した中育つ子供たちは、将来抜きん出て、 本当に強い大人になる』と話す年配の方の言葉を聴いて、東北の人は強いなぁ、と感じました」。

 この写真展は、ただ被災地の状況を伝えるだけでなく、神奈川県在住の東北出身者に、現地の状況を伝える場にもなっている。ふるさとの桜を見ながら、しみじみと語りあったりすることも多いとのこと。この活動を通して、被災地であるふるさと・東北を気にしながら毎日生活している人が神奈川にはたくさんいることをダイレクトに感じることが出来たことは、非常に心に響いたという。

 「被災地から遠い神奈川にいれば、地震の被害を忘れようと思えば忘れられる。でも、東北の良さや、その土地がどのくらい重要なのかは、東北に住んでいなくても伝えられる」と伊藤さん。
 さらに、「写真を見て、来年は東北に桜を見に行ってみようとか、想いを馳せてくれる人が一人でも増えれば」と控えめに語った。

 伊藤さんは今後、被災直後のあわただしい中、写真を撮影させてくれた各県に感謝をこめて、活動の報告と写真をポストカードにして販売した金額を寄付するため、また東北に向かうという。
 伊藤さんの写真は、7月10日(日)県民サポートセンターで行われる、「神奈川ダイアログ~かながわから、私たちにできることを考える~第2回ワークショップ」で展示されることになっている。

青森県三沢市三沢港の桜(東日本桜前線・伊藤さん撮影)

青森県三沢市三沢港の桜(東日本桜前線・伊藤さん撮影)

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▽「県民センターで被災地支援「チャリティーバザー」-ライブや写真展も」(ヨコハマ経済新聞)
http://www.hamakei.com/headline/6190/
▽「被災地に行かずしても、できる支援を考えよう!あなたのアイディアが形になるかも!7/10(日)「神奈川ダイアログ~かながわから、私たちにできることを考える~」第2回ワークショップ実施」(かながわタイムライン)
http://kanamag.net/archives/4807

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