食・アート・遊びを融合させて、楽しみながら消費者の意識を変えていきたい-「SYOKU-YABO農園」眞中やす


 農薬や化学肥料を使わず自ら野菜や米を作り、農園の中に設置した屋台でとれたての新鮮な野菜を使った料理を提供している「SYOKU-YABO農園」(横須賀市芦名2)が、10月15日でオープン1周年を迎える。

「SYOKU-YABO」とは、「食の野望」のこと。「食とは、人間が生きていくための糧(かて)であり、芸術であり、喜びなのだ」という理念のもと、人間にとって大切な「食」の本質を、さまざまな角度からとらえて追求し、全国にそして後世に「食の楽しさ」を残していきたいというメッセージが込められている。

「SYOKU-YABO」プロジェクトがスタートしたのは2009年。ジャングル同然に雑草や竹やぶで覆われていた農地を1年がかりで根気強く開墾したのは「SYOKU-YABO農園」で代表を務める眞中やすさん=葉山町=だ。

 眞中さんは、プロのミュージシャンというもう一つの顔をもつ異色のファーマー。これまで農業経験はなかったが、「老若男女が集まる開放感のある農園で、食・アート・遊びを融合させて、食の本質を楽しみながら追究していきたいという理念は、自分の中にもともとあった」と話す。

「SYOKU-YABO農園」で収穫したばかりの長ねぎを手に持つ代表の眞中やすさん。里芋、さつま芋、ごま、あずき、にんじん、ハーブ類などが植えられ収穫の秋は大忙しだ

「SYOKU-YABO」のプロジェクトに関わるメンバーは合計5人。眞中さんの他に、有機農法にくわしく農作物の栽培について助言をする「顧問役」や、大工、園内にある屋台の骨組みや薪ストーブなどの制作を一手に引き受ける整備工の男性、PR担当のフォトグラファーがおり、「SYOKU-YABO農園」は、楽しい「食」を広げていきたいという「SYOKU-YABO」の理念を具現化する舞台となっている。

 もともと郷土食や、伝統食に関心が高かった眞中さんは、全国をミュージシャンとして巡業しているうちに、農家が抱える農薬や化学肥料の問題を耳にするようになったと話す。

 見た目の美しさを重視する消費者の意識が原因で、小さな虫食いを止めるためだけに農薬を使わざるを得ない状況になっているのを目の当たりにして、大きなショックを受けたという。それと同時に「不揃いな形の野菜でも、虫に食われた野菜でも、もっと主役になるべき。消費者の意識を変えれば世界が変わるはずだ」という発想の転換が生まれたそうだ。「本来は農薬を使わずに、おいしくて安全な農作物が作れるはず」と眞中さん。

 しかし、眞中さんは「農薬や食品添加物は危ないからやめろ」と高らかに啓蒙活動する気はない。「安全」「危険」「体にいいから」というような理由を押しつけられて、何を食べるべきかを人から強制されるのは自分自身が好きではないからだ。

 そのため「SYOKU-YABO農園」では、知識や理屈で食の問題を提示するのではなく、実際の収穫体験を重視している。土に植えられた野菜を掘り起こし、自分で洗い、生でかじる…。思わず「おいしい」と感動するような、ワクワクする体験を通じて、農薬を使わない野菜の安心感や力強い味や香り、みずみずしい食感など、植物のもつ生命力を自ら感じ取ってもらえることを大切にしている。眞中さんはこの方法で、農園に遊びに来るにんじん嫌いの子どもを、何人もにんじん好きに変えてしまったそうだ。

 園内にある屋台では、眞中さんが育てた米や野菜を使った料理を味わうことができる。昼は「糅飯(かてめし)」と呼ばれる季節の野菜や海草、雑穀などを混ぜたご飯を提供している。これは、昔米が貴重だった頃に、少量の米を家族全員で食べる知恵として生まれた混ぜご飯。伝統食の魅力を後世に伝えていきたいという眞中さんの願いが込められている。夜はライトアップされた農園で雑炊や、野菜の料理などお酒にも合う一品料理を味わうことができる。

ランチメニューの「かてめし定食」950円。季節や収穫内容によってメニューが変わる。味噌汁の味噌は40種類の中から好きなものを選ぶことができる

 また、大の味噌汁好きで「発酵食マニア」と自称する眞中さんは、全国から40種類もの味噌を取り寄せているのが自慢だ。客は好きな味噌を選んで注文することができる。注文を受けてから一杯ずつ丁寧に作っているのもこだわりのひとつだ。

「糅飯(かてめし)」と味噌汁、小鉢、漬け物がセットになった定食(950円)は、素朴ながらも、素材それぞれの色や形が目においしく、隠し味に魚醤(ぎょしょう)などを絶妙に組み合わせているため、奥行きのある味わいが楽しめる。「本当においしい料理を食べたら、思わず作り方を知りたくなるように、大切なことは自然と口づてに広がっていくものだと思うのです。ゆっくりとしていますが、信頼あるやりとりの中で、消費者の意識を微力ながら変えていきたい」と語った。

 園内には、ライブパフォーマンスができるステージがあるのも特徴で、ピアノもあり、映画などを鑑賞できるスクリーンも用意されており、プロ・アマ・ジャンルも問わずステージの出演や自主映画の上映会、アート作品の展示をなどを広く募集している。食欲の秋、芸術の秋を満喫しに、農園へ出かけてみてはいかがだろうか。

SYOKU-YABO農園
住所:横須賀市芦名2-1700
連絡先:090-8879-1931
営業時間:11時30分~14時 ※17時~21時(LO:20時30分)
※農作業繁忙期のため10月は昼間の営業のみとなります。ただし前日までに電話で予約をいただければ、夜の営業も行います。繁忙期は臨時休業になることもあるので、ホームページまたは電話でご確認ください。
定休日:なし(雨天、荒天時は休み)

▽リンク
SYOKU-YABOホームページ
http://syoku-yabo.com/

左手がライブや映画の上映ができるステージ、右奥が料理を提供する屋台。農園が見渡せる開放感あふれるウッドテーブル席で、料理や音楽を満喫できる

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