「若いからこそ出てくる情熱を感じて欲しい!」-青少年のための芝居塾を演出する、劇団「風雲かぼちゃの馬車」土井宏晃さん


青少年のための芝居塾と社会人劇団「風雲かぼちゃの馬車」による合同公演『デトロイトウィンターテキサスサマー~シェイクスピア「冬物語」より~』が8月19日(金)~21日(日)神奈川県立青少年センター2F多目的プラザで上演される。この合同公演は今年で3回目。神奈川県演劇連盟と同劇団との共催となる。同劇団代表であり、演出を担当する土井宏晃さん(29)=東京都=に、舞台の見所と、市民との合同演劇について聞いた。

キャストの総数は26名、その内19名が塾生で、7名が劇団員だ。この芝居塾は青少年を対象としており、今年の参加者は15歳~29歳と幅広い。学生は、自身の高校に演劇部がなかったり、人数が少なくて公演ができなかったりする人が参加することも多いという。もちろんプロの俳優を目指している人や、純粋に「演劇」に興味を持った人など様々だという。

劇団「風雲かぼちゃの馬車」土井宏晃さん

劇団「風雲かぼちゃの馬車」土井宏晃さん

土井さんがこの芝居塾に関わるようになったのは、3年前。土井さんは2005年に東京で同劇団を結成、演出家として活動してきた。神奈川演劇フェスティバルに数回参加していた中で、神奈川県演劇連盟より声をかけられ、同連盟に加入することになった。

さらに、東京から神奈川に活動の場を移動したことで、劇団同士の輪が広がっていき、2009年からは同連盟の主催する「高校生のための芝居塾」(2010年から「青少年のための芝居塾」に改称)に関わるようになった。

土井さんは、2009年に、高校生のための芝居塾+風雲かぼちゃの馬車『夏の夜の夢~Arabian Night’s Dream~』、2010年には、青少年のための芝居塾+風雲かぼちゃの馬車『ロミオとジュリエット~West Graveyard Story~』の演出を、同年冬に、神奈川県演劇連盟50周年記念合同公演『二都物語』の脚本・構成・演出を手掛けた。「劇団単独でなく、芝居塾と合同で公演をやると、スケールの大きい舞台となり、多くのキャストが舞台で演じることができる。大舞台に立つことで演じることの楽しさや、チームで作り上げることの一体感、演じる側、観る側両方に、演劇の醍醐味である”一瞬の芸術”を体感してもらえると思っています」と土井さんは、多くの手ごたえを感じている。

今回上演する『デトロイトウィンターテキサスサマー~シェイクスピア「冬物語」より~』は、原作の舞台であるシチリアとボヘミアを、デトロイトとテキサスに移し、現代風にアレンジした。誤解が誤解を生む、シェイクスピアの喜劇的部分はそのままに、スピード感のあるコメディに仕立てている。

「シェイクスピアの古典演劇には普遍的な人間感情が表現されてるんですよね。それを現代の若者が具現化することによって、演じる人と観ている人に、その愛とか友情とかをダイレクトに感じてほしいと思っています」と笑顔の中にも真剣なまなざしで語る土井さん。

芝居塾と同劇団は、5月から公演のある8月まで、約30回に渡る練習を重ねてきた。ふだんの練習は、公演が行われる同センター2階の、小さな体育館ほどの練習室を2つ使って行われている。

「デトロイトウィンターテキサスサマー」練習風景

「デトロイトウィンターテキサスサマー」練習風景

土井さん主宰の同劇団のコンセプト「頭で考えたことよりも感じたものにこそ真実がある」との言葉通り、実際に役者たちに向けられる土井さんの演出の指示は「ちょっとそこの動きがどうしても気に入らない」「気持ちはわかるんだけど、伝わってこない」と感覚的だ。

「若さゆえのパワーや瞬発力を大切にしてます」という土井さんの指示する場面は次々と切り替わる。台詞の一つや場面のきっかけを切り取って指示するので、役者たちも気が抜けない。「ハイッ」と大声で返事をし、その指示に答えようと、全力で走り、踊り、歌う。「コミカルな動きをしていても真剣であるということを忘れないように」「なぜ面白いのかということを考えながら演じないと、客席には伝わらない」と役者たちに指導する。

土井さんの指示にしたがいながらも、己で考え、練習室狭しと動き回る役者たちは、冷房が効いている室内にもかかわらず、汗だくだ。練習の段階から、そんなに腹の底から声を張り上げて大丈夫かと感じるほど、パワフルに練習は進められる。土井さんの「若いから出せる熱」「若い今だからこそできる舞台」へのこだわりを、役者一人一人が受け止めている。

土井さんは「わたしも18歳の頃から演劇を続けていますが、そこで自分が得たノウハウを何かしら持ち帰ってもらえたらと思っています。この芝居塾を通して、芝居をやる人が増えてほしい」と語る。実際にこの芝居塾には、既にリピーターが数名いるそうだ。

「デトロイトウィンターテキサスサマー」ポスター

「デトロイトウィンターテキサスサマー」ポスター

今回のメンバーが29歳までの若い青少年であることは「非常に意味がある」と土井さんはいう。「若いからこそ出せる情熱、その熱を、考えるのではなく、感じてほしい」と土井さんは力を込める。役者の一人は「本当に体力を使う。公演後には倒れる直前になる」というが、その表情には充実感があふれる。「演劇は”瞬間の芸術”で”今しかできない表現のたまもの”だと思っている」という土井さん。今回の公演は、一日2公演、計6公演行われるが、その一回一回も、それぞれ違った輝きを見せるに違いない。

▽リンク
風雲かぼちゃの馬車ホームページ
http://www.geocities.jp/fuuun1223/
『デトロイトウィンターテキサスサマー~シェイクスピア「冬物語」より~』公演詳細
http://www.theaterguide.co.jp/search_result/paid/detail.php?id=21939

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