片浦地区のレモンを使ったご当地サイダーで農家を応援し、地域活性化へつなげたい- 鈴木伸幸さん


小田原市片浦地区で栽培されている特産品のレモンを使ったご当地サイダー「片浦レモンサイダー」(1瓶330ミリリットル入り、230円)が、今年4月の発売開始以来、好調な売れ行きを示している。天然のレモン果汁ならではの爽やかな酸味が特徴で、昔ながらの王冠キャップと自然豊かな片浦地区の景観を描いたクラシックなデザインのラベルも好評だ。

小田原まちなか市場の軽トラ朝市で、「片浦レモンサイダー」を売る鈴木伸幸さん。この日は片浦の実家でとれたバレンシアオレンジをセットで販売した。

主に小田原市内や箱根を中心とした商店や宿泊施設で販売されているこのサイダーは、地元のイベントでも販売され、8月7日に行われた「まちなか市場実行委員会」主催の「小田原まちなか市場 軽トラ朝市」(小田原市栄町)にも初出店。この日は特別に片浦地区で旬を迎えたバレンシアオレンジと片浦レモンサイダーをセットにして300円で販売。朝市終了1時間前に売り切れてしまうほどの盛況ぶりだった。片浦レモンサイダーは初回1万本を完売した後、追加生産を重ねこれまでの4ヵ月間に約4万6千本を売り上げている。

片浦レモンサイダーを企画したのは、片浦地区のみかん農家で生まれ育ったFMおだわら放送局長の鈴木伸幸さん(50)=小田原市石橋=と、報徳二宮神社(小田原市城内8)宮司の草山明久さん(43)。「極力農薬を使わずに栽培し、ワックスや防カビ剤も不使用の安心・安全な片浦のレモンを小田原の特産品としてもっと多くの人に知ってもらいたい。片浦レモンサイダーには見栄えが悪いという理由だけで、市場に出ることができないレモンも買い取って使っています」と話す鈴木さん。年間を通じて農家が安定した収入を得ることで、少しでも農家を応援したいとの思いから、今年に入って片浦レモンサイダーの商品化に踏み切ったそうだ。

元音楽プロデューサーの鈴木さんは、CDジャケットのように思わず手に取りたくなるようなラベルにしたいと、ビジュアルにもこだわったという。

鈴木さん自身、片浦にある実家のみかん農園では75歳になる母親が一人で農作業をしており、高齢化が進む農家の後継者不足などの現状を憂いでいる一人だ。「このままの状態が続けば、片浦地区の柑橘類の生産量は最盛期の1割程度になることが懸念され、これまで守られてきた小田原片浦地区の美しい景観をなんとか次の世代へ残したい」という切なる願いが背景にある。

片浦レモンサイダーは、運営団体である「小田原柑橘倶楽部」が片浦レモンを購入し、報徳会館のスタッフがボランティアでレモン果汁を搾取。佐賀県の飲料会社で製造するルートを作り上げた。また、地元の飲料卸会社の協力を得て小田原や箱根を中心としたエリアで販売し、地域で人やもの、お金が循環する仕組み作りを目指している。

鈴木さんと草山さんの二人は片浦地区のみかん産業の再構築を目指して小田原の企業や個人による民間の力と小田原市のサポートを受けて運営している「片浦みかんプロジェクト」の発起人として、昨年9月から活動を始め小田原みかんの価値向上へ向けて、これまでにお歳暮用みかんの販売などを手がけてきた。片浦レモンサイダーもこのプロジェクトの第2弾として始まったものだ。

今後は「小田原だけにとどまらず、神奈川県西部地域を視野に入れて商品ブランディングを手がけていきたい」語った鈴木さん。新商品の開発にも意欲を見せた。

急斜面が続く片浦地区の農園は石垣のおかげで水はけが良く、相模湾からの照り返しで太陽の恵みを一年中受けることで、レモンやみかんといった柑橘類がおいしく育つのに適した条件が揃う。この美しい景観は地元の人でも知らないことが多く、農園に見学に来ると一様に驚くそうだ。

▽リンク
小田原柑橘倶楽部サイト 片浦レモンサイダー
http://kataura-mikan.ninomiya.or.jp/lemoncider/

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